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な男たちをなかに入らせたが、不自然なほど長く準備に手間取った後、ようやく男たちが荷物をかついで出てくるまで、ろくに息もつけないありさまだった。男たちがかついでいるものはベッドのシーツにくるまれていて、その輪郭すら定かでないことを船医はうれしく思った。男たちはかついでいたものを何とか船端《ふなばた》からおろすと更年期中醫調理、シーツにくるまれたものを顕《あらわ》にすることなく貨物船に運び去った。キュナード汽船会社の船がまた進みはじめると、船医と船付きの葬儀屋は何か最後にしてやれるものはないかとサイダムの特等室を調べた。そして船医はまたしても口を閉ざすばかりか、嘘までつかざるをえないことになった。どうしてサイダム夫人の血をぬいてしまったのかと葬儀屋にたずねられたとき、船医はそんなことはしていないと断言することもせず、さらには棚《たな》に置かれていた壜《びん》がなくなっていることや、壜にはいっていたものがあわただしく廃棄されて流しにその匂が残っていることも、あえて指摘することはしなかった。連中が人間であるとしての話だが、あの男たちのポケットは、船を離れるときにやけにふくれあがっていた。二時間後、この怪事件について知るべきことのすべては無線によって世間の知るところとなった。
 
おなじ六月の夕暮どき、マロウンは海からの知らせを聞かないままに、レッド・フックの小路をやみく健營營養餐單もにかけずりまわっていた。突然の騒ぎが広がっていき、さながら異常事態が「闇の情報経路」によって知らされたかのように、住民たちが何事かを期待して、ダンス・ホールとして使われる教会やパーカー・プレイスの家屋のまわりに群がっていたのだ。いましも三人の子供が姿を消したばかりで――青い目をしたノルウェー人の子供たちがゴワナスにむかう通りから姿を消したのだが――その地区の屈強なスカンディナヴィア人たちのあい

だに暴動の兆しがあるとの噂《うわさ》がとびかっていた。マロウンはここ何週間か同僚たちに一斉手入れの試みをうながしていたが、ここにきて同僚たちもついに、ダブリン出身の夢想家の推測というよりは、自分たちの良識に照らしても明らかな状況に心動かされ、徹底した手入れをおこなうことに同意していたのだった。この日の夕暮どきの不穏かつ由々しい雰囲気が決定的要素となり、ちょうど真夜中になろうという頃、三つの署から一団となった警官や刑事がパーカー・プレイスとその周辺を急襲した。ドアが押し破られ、仲間にはぐれた者たちが逮捕され、蝋燭《ろうそく》のともる部屋という部屋から、紋織りのローブや司教冠や謎めいた品じなを

身におびる、信じがたいほど雑多な外国人の群が力ずくでひきずりだされた。乱闘のさなかに多くの物が失われたのは、思いもかけないところに設けられた竪穴《たてあな》に素早く投げこまれたためで、真相を告げる臭も、いきなり刺激性の香をくべられかき消されてしまった。しかし飛び散った血はいたるところに見かけられ、マロウンはまだ煙の健營體重管理たちのぼっている祭壇や火鉢を見るたびに震えあがった。
 マロウンは同時にいくつもの場所に行きたい心境だったが、荒廃し