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こういう風に行くのが最短だ」
「あぁ、それはわかる」
 2点を結ぶ最短なんだからそりゃ直線になるだろう。
「今のは肩慣らし。では、次がいよいよ聞きたいことだ。この紙が空中に浮いていたとする。 しかも、それがぐにゃりと曲がっていたとしよう」
 そういって博士は今目の前にあるワームホールの構造図の紙の隅を右手でつまんで持ち上げた。
 そしてその隅っこから対角線上にある隅を左手でつまんで持ち上げる。
 で、それを折れ曲がった方が上に来るように………形としてはΩみたいになるようにして紙を空中に持ち上げた。
「では、再度質問だ。さっきの2点を結ぶ最短距離は一体どうなる?」
 最短距離………だろ。
 紙の問題なんだからつまり、
「紙に沿ってぐるっと回るように紙の上に線を書いたら、それが最短距離になるんじゃないか?」
「………0点だ」
 博士は紙を机の上に置き、ふぅとため息をついた。
 しかしその目は決して怒っているのではなく、出来の悪い子供を愛するかのような優しいまなざし。
 いや、半分諦めが入っているのかもしれないが………。
「え、え、そうじゃないのか?」
『………それでワイズテリー航法の知識が多少あると自負するなんて、情けないですよ』
 サトミの容赦ないツッこみ。
「う、うるさいなぁ、サトミ」
「いやはや、まったくじゃ」
「博士まで………」
 ちょっと悲しくなった。
「いいかよく聞くんだ。その方法では数光年かかる先の星までスペースシャトルでは数百年かかってしまうだろう。 近代科学はまさにそれを前提として、スペースシャトルの速度を早くしたり、あるいは 人間をフリーズして到着する頃に解凍するなど考えられてきた」
 それぐらいはさすがに知っている。
 もう50年ほど、昔の話だ。
「しかし、それでは宇宙開発に限度がある。お前も知っているとは思うが、この恒星系ではエンデしか 直接的には人の住める環境にはない。他の惑星も環境を整えることによって多少住めるようにはなるだろう。 しかしそれでは気の遠くなるような時間がかかってしまう」
 確か第3惑星をエンデと同じ環境たら5000年ほどかかるとか聞いたことがある。
?」
 そう思うのが普通だ。
 ガイルがオレンジ色の光を発している。
 ならばその方向にガイルがあると考えるのが至当だろう。
「いいや。そうではない。まっすぐあると思っているかもしれないが決してまっすぐではない。 星が見えるのは、“光がそっちの方向から来た”ということに過ぎない。言い換えるならば、 光さえ来ればそこに星があると思えてしまうということだ」
「………?」
「少しややこしいか?ならばさっきの紙の例を思い出せ。お前の思考はいまだ机に張り付いたままだ。 そうではない。空中に浮かせてみよ。点はどこにある?」
「机に張り付いている………って」
 ちょっと待て。