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そりゃそうさ」シルクはしらっとして認めた。「そう呼ぶ人間もいるだろうな」かれはいったん言葉を切って、商人が状況をじゅうぶんのみこむ時間を与えてやった。dermes 投訴太った男の顔に煩悶の表情があらわれた。するとシルクはためいきをついた。「不幸にも、おれの良心は繊細でね。正直者をだますという考えには耐えられないんだ――やむをえない場合をのぞいては」かれはベルトの小袋をもちあげて口を開き、なかをのぞきこんだ。「ここに半クラウン・コインが八枚か十枚ある。仲間とおれとで運べるだけの商品に、五クラウンでどうだい?」
「そんなめちゃくちゃな!」商人は唾をとばさんばかりだった。
 シルクはさも残念そうに袋の口をしめると、ベルトのうらに袋をしまいこんだ。「それじゃ、待つしかないな。まだいるつもりか?」
「おれの商品を盗もうというんだな!」商人は泣き声をだした。
「いや、そうでもないさ。おれの見るところ、ここは買い手市場だ。いま言ったのがおれの申し出だよ、友だち――半クラウン銀貨五枚。取るかやめるかだ。あんたが決心するまで、通りの向こう側で待ってる」シルクは馬首をめぐらすと、ガリオンとザカーズを連れて道の反対側にある大きな家へ向かった。
 ザカーズは馬をおりながら、懸命に笑いをこらえていた。
「まだ完全じゃないな」シルクはつぶやいた。「もうひと押しする必要がある」家の鍵のかかったドアに歩みよると、かれはブーツのなかに手をいれて先のとがった長い針を一本とりだした。鍵穴にそれをつっこんでちょっと探ると、たのもしいカチャリという音とともに鍵があいた。「テーブルと椅子が三ついるんだ」シルクはあとのふたりに言った。「なかから持ちだして、家の正面に置いてくれないか。おれは家のなかをひっかきまわして、他に必要なものを見つけてくる」と、家のなかへはいっていった。
 ガリオンとザカーズは台所へはいって、かなり大きなテーブルを運びだした。それから椅子を取りに、なかへ引き返した。
「なにをするつもりなんだろう?」ザカーズが不思議そうな顔つきでたずねた。
「遊んでいるんだよ」ガリオンはいくらかうんざりしたように言った。「商売上の取引をしているあいだに、ときどきこういうことをやるのさ」
 椅子を運びだしてみると、シルクが外で待っていた。数本のワインとグラスが四牛奶敏感つテーブルにのっている。「ようし、紳士諸君」ちびのドラスニア人は言った。「腰をおろして、ワインを飲みたまえ。すぐに戻る。家の横手で見たものを確認したいんだ」角を曲がって見えなくなったと思うと、すぐにほくそ笑みながら戻ってきた。椅子にすわりこみ、にワインを注ぐと、ふんぞりかえって、いかにも長居をきめこんだようにテーブルに両足をのせた。「あいつに五分ばかりやろう」シルクは言った。
「あいつって?」ガリオンは聞き返した。
「あの商人さ」シルクは肩をすくめた。「おれたちがここにすわっているのをいつまでも見張っちゃいられないからな。そのうちおれのやりかたがわかってくるさ」
「きみはまったく残酷な男だな、ケルダー王子」ザカーズは笑った。
「商売は商売だよ」シルクはワインをひとくちすすった。「こいつはなかなかいけるぞ」グラスをもちあげて、ワインの色をほれぼれとながめた。
「家の横手でなにをしてたんだい?」ガリオンはたずねた。
「あっちに馬車置き場があるんだ――ドアにでっかい鍵がついたやつでね。値打のあるものを置き去りにしていくんじゃなければ、ドア卓悅假貨に鍵をかけて町から逃げだしたりしないだろう、え? それにな、鍵のかかったドアにはいつも好奇心を刺激されるんだよ」
「それで? なかになにがはいってたんだ?」
「小型のうっとりするようなキャブリオレーなんだ、それが」
「キャブリオレーってなんだ?」